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第8回FIRE講演会開催報告ー社会と向き合い、「好き」を育てる力を考えるー
授業・学び
これまでのFIREでは、大学教員をはじめとする研究者の方々をお招きし、生徒が学問と出会う機会を大切にしてきました。
第8回となる今回は、Webデザインや広告分野においてご活躍され、「好き」を仕事として形にしてこられた実践者、築澤有莉先生をお迎えいたしました。
ご講演を通して先生が一貫して強調されていたのは、「社会において何が求められているのかを常に問い続けること」の重要性です。これは現代のマーケティングの視点にも通じる考え方であり、依頼された内容をそのまま形にするのではなく、その背景にある「本質的なニーズ」を捉えることこそが、プロフェッショナルとしての力につながるのだと語られました。
例えば、「ハチミツを販売するための広告」を制作する場合を考えると、ターゲットが既にハチミツを好む層なのか、それとも初めて手に取る層なのかによって、用いる言葉、色彩、写真、さらには全体のアプローチまでもが大きく変わります。そうした前提条件を見極め、戦略的視点を含めて提案できることが専門家の役割であり、単にデザインを制作することとは本質的に異なるというお話でした。
また、AIに具体的な指示を出すことは可能であっても、その前段階にある「問いの設定」や「提案の構築」、さらにはクライアントに対する説明や意思決定の伴走までを担うことこそが仕事の本質であるとも述べられました。
当日は、ファシリテーターのだい氏との対話を交えながら、終始温かな雰囲気のもとで講演が進みました。会場からの質問にも一つひとつ丁寧にお答えくださり、実践者ならではの率直な言葉が、参加者の心に深く響く時間となりました。
中高生に向けたメッセージも大変印象的でした。「好きなことを一つに絞らなければならないと思う必要はない。常に二つ、三つの可能性を持っていてよい」というお言葉は、多様な進路を模索する生徒にとって大きな励ましとなったことでしょう。また、物事を0か100かで捉えるのではなく、たとえ小さくとも続けること、捨てずに積み重ねていくことの大切さ、そして「やってみないか」と声をかけられたときには、それを好機と捉えて挑戦する姿勢の重要性についても語られました。先生ご自身の歩みが、その言葉を何より雄弁に裏付けていました。
参加された保護者の方からは、「子どもが心から好きだと思えることを見つけられるようにするために、親としてどのような関わりができるか」という質問が寄せられました。
築澤先生は「まだ親としては未熟な立場ではありますが」と前置きされたうえで、子どもが何かに集中しているときは可能な限りその時間を尊重することの大切さを挙げられました。食事や入浴の時間は調整できるものであり、たとえ習い事であっても、今まさに夢中になっているものがあるのであれば、その時間を優先することもあるとのことでした。
さらに、「本物に触れさせること」を意識しているともお話しくださいました。年齢を理由に機会を制限するのではなく、実際の体験に触れさせることが心を動かし、将来へとつながっていくのではないかとの示唆に富むお言葉でした。
保護者の方からは、「今日のお話のキーワードは“観察力”と“飛び込む”だと思いました。観察力と飛び込む勇気を使わせられるような子育てを模索したいと思いました」との感想も寄せられました。社会の動きを観察する力、そして訪れた機会に対して一歩を踏み出す勇気。築澤先生のこれまでの歩みは、その二つの重要性を体現しているように感じられました。
今回のFIREは、「社会とつながるとは何か」「好きなことをどのように育てていくか」
「続けるとはどういうことか」といった問いについて、実践者の視点から深く考える貴重な機会となりました。築澤有莉先生に、心より感謝申し上げます。